つむぎ語り~心を紡ぐ、言葉の旅

語り口調のエッセイよ。

母は天才、娘は普通…これって遺伝のバグ?

昨日ね、娘とカラオケに行ったのよ。

なんと8時間近くも!途中4時間半は初めてのヒトカラ

初めは「一人で歌うなんて寂しくない?」って思ったけど、意外と楽しかったわ。

でも、採点機能って残酷ね。

あたし、自分がどれだけ音程外してるかを目の当たりにして、「え?これ本当にあたし?」ってショック。

まるで音程が迷子になったGPSみたいな感じよ。

それで思い出したの。あたしの母のこと。

母の歌の才能は神レベルだったのよ。

スカウトが絶えないどころか、近所の人たちみんな「歌手になりなさい」って言ってたくらい。

母の歌を聴きたくてお店に通うファンが多かったらしいの。

クラブで母がマイクを持つと、全員が息を呑む、そんな空間を作れる人だったのよね。

鳥肌が立つほどの歌声でね、美空ひばりさんの曲なんてお手のもの。

プロの歌手だって母には敵わないんじゃないかって思うくらいよ。

で、こんなエピソードがあるの。

ある日、お店のお客さんに「ぜひパーティーに来てほしい」ってお願いされて、母が呼ばれたの。

しかもそのパーティーには松方弘樹さんがゲストとしていらしてたのよ!

でね、松方さんと母がデュエットすることになったの。

これってすごくない?あの松方さんよ?!

しかも、その歌声が大絶賛されたんだから。もう、その場にいた全員が母のファンになっちゃったみたい。いやぁ、母って本当にすごかったのよね。

でもね、そんな母は芸能界には全然興味がなかったのよ。

あたしだったら、絶対オーディション受けまくるのに!

だって母、美貌だってあったのよ。歌ってよし、見た目もよし。

それで芸能界を選ばないなんて、今でも「もったいない!」って思っちゃうわ。

ただ、今は少し切ないのよ。母はパーキンソン病の影響で、声があまり出なくなってしまったの。それが一番つらいところよね。

才能ってその人だけじゃなく、周りの人にも喜びを与えるものじゃない?

母の歌声がもう聞けないと思うと、本当に寂しいわ。

で、ここからが問題。

そんな母のDNAを引き継いだはずのあたしが、なぜこうなったのかって話よ。

母の才能のDNA、どこかで消失しちゃったんじゃない?

母が美空ひばりなら、あたしは場末のカラオケで必死に歌う酔っ払いレベル。

でもね、昨日娘と一緒にカラオケで楽しい時間を過ごせたこと、それだけで十分幸せよね。

特に娘とのデュエットは最高だったわ。まあ採点機能はオフにしたけどね!

でも、次回は母のことを思い出して、美空ひばりさんの曲に挑戦してみようかしら。

いや、やっぱり採点機能はなしでね。

それにしても、母の才能にはいつも感動させられるわ。

あの時代にあれだけの才能を持ちながら、それをあえて選ばなかった母の選択って、ある意味すごく強い生き方よね。

才能を持っているだけじゃなく、それをどう活かすか、どう選ぶかってことが大事なんだなって気づかされるわ。

あたし?あたしは母には到底及ばないけど、自分なりに楽しいことを見つけて、それを大事にしていこうと思うの。

ヒトカラが楽しかったようにね。人生って、完璧じゃなくても楽しんだもの勝ちだと思うのよ。