あたし、主人と別居してもう29年になるのよ。
これだけ言うと驚かれるけど、最初はそりゃあラブラブだったのよね。
主人はあたしより16歳年上で、出会いはあたしの両親が経営してた割烹料理屋。
そこで彼はお客さんとして来てたの。
猛烈アタックに押されて
最初はね、毎日のように猛烈にアタックされて「まあ、食事くらいなら付き合ってもいいか」って気持ちで始まったのよ。
お店が始まる前に同伴みたいに食事に行ったり、ゴルフに付き合ったり、お店のアフターにも顔を出したりね。
彼の優しさと紳士的な態度にどんどん引き込まれていったの。
行動力もあるし、頼りがいがあって、何よりあたしのわがままを何でも聞いてくれるのよ。
そんな人、そうそういないでしょ?
これね、自分でも言うのも恥ずかしい話なんだけど、あたし目当てで店に通うお客さんが結構いたのよ。
まぁ、お店の看板娘みたいなもんで、主人もその中のひとりだったわけ。
つまり、ライバルがわんさかいる状態。
ママに相談した主人の戦略
後々聞いた話なんだけどね、主人は「どうしたらあたしをものにできるか」悩みに悩んで、ついにはあたしの母親である【ママ】に相談したらしいのよ。
で、ママがどう答えたかというと…「とにかく猛烈にアタックしなさい」ですって!
母としては、いいお客さんとして引っ張るつもりだったのよね。
商売に娘を使ってと思うけども、昔の時代はそんなもんよね。
ただの割烹料理屋だけど、お酒を注いだり、お酒をいただいたりはしていたからね。
でね、そのアドバイスを真に受けて、主人は他のお客さんに負けないくらい熱烈にアプローチしてきたの。
毎日お店に通って、とにかく全力で「愛してるよ」って伝えてきたわけよ。
ライバルを蹴散らした主人の勝利
主人の作戦は見事に成功したってわけ。
だって、あたしのわがままを全部受け入れて、しかも他のどのライバルよりも熱心で、行動力があったんだもの。
あたしも当時は「こんなにあたしを大事にしてくれる人は他にいない!」って思ったのよね。
頭の中はお姫さま
彼は会社を経営していたからお金に余裕もあったのよ。
「好きなことして生活させてあげるよ」って言葉に、もう頭の中だけお姫さまなあたしは「これだ!」って思っちゃったの。
だってさ、理想的じゃない?
「よし、とっとと結婚しちゃおう!」って思ったのが運命の分かれ道だったわけよ。
でもね、振り返るとほんとに何もわかってなかったのよね。
頭の中、お花畑というか、全力でお姫さまモードだったの。
ママの後悔
結婚前に母は「あの時、軽率にアドバイスしちゃった」って後悔してたのよ。
主人にアタックを勧めた結果、まさかあたしがそのまま結婚することになるなんてね。
あたしが16歳も年上の人に本気になるなんて夢にも思わなかったみたい。
「あれがなかったら、今どうなってたのかしら…」なんて思ってるらしいのよ。
でもさ、結局そのアタックがなければ結婚してなかったのは確かだし、あたしもその情熱にほだされた部分が大きいのよね。
若さゆえの無邪気さというのか、ただただ脳天気なあたしだったわね。
そんなあたしがどうやって29年の別居生活に至ったのか、その辺の続きはまた今度話しましょうか。