つむぎ語り~心を紡ぐ、言葉の旅

語り口調のエッセイよ。

転校生というコンプレックス:自分が作り上げた鎧

「転校生のくせに」って、これね、あたしが転校するたびに言われたもうお約束のセリフなのよ。

驚きも何もしないわよね、聞き慣れた曲みたいなものよ。

毎回言われるたびにね、「ああ、またか」って思うわけ。


で、転校生って、何だか妙なルールがあったのよ。

掃除の時間たまたま新しいモップをあたしが手にして使ってたら、「転校生のくせに新しいの使うな!」って男子に怒鳴られたりね。

新人は新品を使っちゃいけないルールだったなんて知らなかったわよ!

「でしゃばるな」「一緒に笑うな」「輪に入るな」、そして「目も合わせちゃいけない」って。

クラスメイトは先輩か?

ま、たまたまあたしが行った学校がそうだったのか、あたし自身がそういう空気を生み出してたのかは、正直わかんないんだけどね。

優しく声かけてくれる子もいたのよ。

でも、その優しさがね、もう義務感とか責任感からきてるのが後でわかるとね、

「あれ?違う?」ってガッカリすることが多かったの。

なんか半端な優しさって、心にグサっとくるのよ。

ほら、野良にエサを気まぐれに与えて知らんぷりみたいな感じよね。

あたし野良の気もちがわかったわ(笑)


一度転校生になったらさ、もうその「転校生」のレッテルが一生消えないのよね。

何よそれって話だけど、卒業までそのまま。

「そういえば転校生なんだよね?」なんて言われるたびに、またその距離感がね、ぐっと心に刺さるわけ。

「ああ、やっぱりあたしはよそ者なんだな」って、毎回リセットされる感じなのよ。

いつまでゲスト扱いなのって思うのよ。


で、卒業アルバム。

あたしにはすごく特別な思いがあったわけよ。

ページを開けたらね、あたしは後半までいないのよ。

みんなの成長の記録がずっとそこに残ってるのに。

1年生のあどけない顔から成長していく姿を見ながら、あたしはただそのページをめくるだけ。

卒業式では泣かなかったけどね、アルバムを見た瞬間に涙が止まらなかったの。

あの空白がずしんと胸にきたのかもね。


でもね、あたしの転校生というイメージを覆したのあたしの孫なの!


5年生の時に転校生になったんだけど、なんと3日目にはね、もう転校生っていうことさえ忘れちゃうくらい学校に馴染んでたの。

恐るべきコミュニケーション能力よね!

クラスの子に「なんか最初からいたみたい」って言われてたっていうんだから、もう、あたしとは大違いよ。

で、早速男子とケンカまでしてるっていうじゃない。

いや、今時の子はそれがかっこいいらしいのよ、男勝りな女子っていうのが。

 

今振り返ると、結局あたし自身が「転校生」っていうコンプレックスを自分で作り上げてたのかもしれないわね。

あの頃は周りの反応に過剰に敏感になってたのかもしれないけど、今思えば、たぶんあたしが勝手にそう感じてただけで、他の子たちはそこまで気にしてなかったのかもね。

「転校生」っていう肩書きを自分に貼り付けて、自分でその距離感を保っちゃってたのかも。

転校生という鎧を着てた感じ?


転校を繰り返して心無い言葉を浴びせられているうちに「どうせあたしは転校生よ」という卑屈な思いが溜まっていったのかもね。

孫もきっと言われたと思うんだけど、それを振り切る強い力があったのよね。

見習うべきは孫なり、よ。