つむぎ語り~心を紡ぐ、言葉の旅

語り口調のエッセイよ。

お金を借りにきたおじさんの結末

昨日のつづきなんだけど、ってもう3記事目まで引っ張っちゃって長くなっちゃったわよ。

まあ、実際は3記事ではとても納まらない長いながーい出来事だったけどもね。

そう、車を返してもらったのは良かったけど、そのご主人たら、車がないと買い物にも行けなくて困っているって言うじゃない。

そんな話し聞かされたら放っておけないでしょうよ。

だって、車がないと生きていけないくらいの田舎なのよ。

野垂れ死んじゃったら、なんだかあたしのせいみたいな気持になるじゃないの。

仕方ないからそれから度々買い物とか郵便局とか連れてったわけ。

でも本当に会話らしい会話をしたこともない関係なのよ。

会話が弾んで楽しかったり、暖かい話しで癒されたりとかあったらね、また全然違ったと思うのよ。

世間話しでさえ、全くしないようなコミュ力なのよ。

もうどうしてボランティアしているのかわからなくなってきて、ついにあたしも精神的に疲れちゃって、これで最後でってお断りしたの。

そしてしばらくして、奥さんしか散歩で見かけなくなったのよ。

あれ?ご主人何かあったのかしら?と思って聞いちゃったの。

そしたら、ご主人あれから脳梗塞で倒れて、下半身不随になったって!

それ聞いたら、胸が痛んでね。

しばらくして、奥さんの犬の散歩さえも見かけなくなったのよ。

犬もずいぶん年だったから何かあったのかしらとか思っちゃったわ。

正直不思議に思うのよ。なんであたしに頼んできたのかって。

他に頼める人がいなかったんでしょうけど。

普通なら頼む相手ってもっと近しい関係の人だと思うじゃない。

その老夫婦にとって、あたしが最後の頼みの綱って、なんだかおかしな話しよ。

あの頃あたしは30代だったわけよ。

30代の頃のあたしって、そんなに親しみやすいタイプだったかって考えると…うーん、微妙よ(笑)。

特別に気さくってわけじゃなかったしね。

あのまま断らずに続けていたら、正直どうなっていたのかって、時々考えるのよ。

お金の貸し借りがどんどんエスカレートしてたかもしれないし、

お互いの関係がもっと複雑になっていたかもしれないわよね。

でもね、ふと考えるのよ。あの時、もっと他に何かできたんじゃないかって。

後悔はしてないけど反省はしてるわね。

今ならあの頃のように生活に余裕ないけど、知識はあるからいろいろアドバイスできるからね。

うまく断るスキルも上がってるけど(笑)

20年たった今、どうしてるのかわからないけど……時々、あの犬の散歩を思い出すのよね…。